〜 ワンポイント 〜 納税者権利憲章
納税者の税務に関する権利・義務をわかりやすい言葉で説明した公文書。現在、OECD加盟国中、
英米仏や韓国など24ヵ国が制定しており、納税者憲章、納税者権利宣言などの呼び方があります。
我が国でも政府税制調査会が平成22年度税制改正で、その制定について1年以内を目途に結論を
出すとしています。
小規模宅地等の減額特例の改正ポイント
小規模宅地等の減額特例は、相続後に事業等を継続しない場合など、制度の趣旨にそぐわない
場合でも一定の減額が可能でしたが、平成22年度税制改正により、平成22年4月1日以後の相続
から厳格適用となりました。今回の改正のポイントは、次の4点です。
小規模宅地等の要件の見直し
改正前は、相続人等が相続税の申告期限まで事業又は居住の継続をしない小規模宅地
等についても、上限面積200u ・ 減額割合50%の減額特例の適用を受けることが可能
でしたが、改正により、対象外とされました。(図表1参照)
( 図表1 ) 小規模宅地等の減額特例
宅 地 等 , |
改 正 前 |
→ |
改 正 後 |
上限面積 , |
軽減割合 , |
上限面積 , |
軽減割合 , |
事 業 用 , |
事業継続 , |
400u |
▲80% |
400u |
▲80% |
非継続 |
200u |
▲50% |
適用対象から除外 |
〃 , |
不動産貸付 , |
事業継続 |
200u |
▲50% |
200u |
▲50% |
非継続 |
200u |
▲50% |
適用対象から除外 |
居 住 用 , |
居住継続 |
240u |
▲80% |
240u |
▲80% |
非継続 |
200u |
▲50% |
適用対象から除外 |
( 注 ) 1.事業継続又は居住継続とは、相続税の申告期限(相続開始後10ヵ月)まで
事業又は居住を継続する場合をいいます。
2.「 宅地等 」 とは、宅地および借地権をいいます。
共同相続した場合の見直し
改正前は、課税の特例が受けられる小規模宅地等を複数の者が共同で相続等により
取得した場合には、その取得者のうち1人でも適用要件を満たす者がいるときは、その
小規模宅地等の全体が80%減額割合の対象とされていましたが、改正により、その
取得者ごとに適用要件を判定することになりました。(図表2参照)
( 図表2 ) 共同相続の場合
例 ) 配偶者と居住しない子が共同相続すると・・・
『 従来 』 配偶者 ▲80%
居住しない子 ▲80%
一部でも配偶者が相続すれば、居住しない子も▲80%だった
↓
『 4月以降 』 配偶者 ▲80%
居住しない子 ▲80%
宅地の上に存する一棟の建物のうちに居住用とそれ以外の部分がある場合の見直し
改正前は、宅地の上に存する一棟の建物のうち、居住用部分が含まれている場合には、
特定事業用宅地等に該当する部分以外のすべての部分が特定居住用宅地等と同様の
上限面積 ・ 減額割合とされてきましたが、改正により、図表3のように、特定居住用宅地
等の要件に該当する部分とそれ以外の部分がある場合には、部分ごとに按分して減額
割合を計算することになりました。
( 図表3 ) 一棟の建物のうちに居住用とそれ以外の部分がある場合のイメージ図
|
< 改正前 > |
→ |
< 改正後 > |
|
4F |
居住用部分 |
居住用があれば
全体が80%減額 |
4F |
居住用部分 |
ー特定居住用 240u ・ 80%減額 |
3F |
貸付用部分 |
3F |
貸付用部分 |
ー特定事業用 400u ・ 80%減額 |
2F |
貸付用部分 |
2F |
貸付用部分 |
ー上記以外 200u ・ 50%減額 |
1F |
貸付用部分
( 空室 ) |
1F |
貸付用部分
( 空室 ) |
ー減額適用なし |
複数の居住用宅地等がある場合の特例適用の明確化
改正前は、被相続人等の居住の用に供していた宅地等が複数存在する場合には、
小規模宅地等の課税の特例の適用について明確な規定がありませんでしたが、改正
により、特例の対象が 「 主として居住の用に供していた1の宅地等に限る
」 と明文化
されました。
事前にできる主な相続税対策
相続税には 「 5,000万円 + 法定相続人1人当たり1,000万円 」 という基礎控除枠
があり、この枠内なら相続税はかかりません。これまでは、小規模宅地等の特例を利用
することで相続財産を枠内に収められたケースも多くありました。
今回の改正により課税が強化され、今後も相続税の課税対象者を増やす方向の改正が
行われる可能性が高いので、次のような対策の検討が有効です。
( 1 ) 年間110万円の贈与税基礎控除の活用
子供だけではなく、子供の配偶者や孫にも使うとより効果的です。
( 2 ) 贈与税の配偶者控除
婚姻して20年以上の配偶者への居住用不動産又はその取得金額の贈与
は、2,000万円まで控除できます。
( 3 ) 相続時精算課税制度
2,500万円までの財産に対する贈与税の課税を相続発生時まで繰り
延べる方法で、値上がりが見込まれる資産により有効です。
( 4 ) 住宅取得等資金の贈与税非課税
平成22年中は1,500万円、23年中は1,000万円まで住宅取得等資金
の贈与が非課税。20歳以上の「直系尊属」からの贈与であればいいので
受贈者は、子供だけではなく孫なども対象となります。
アパート増築の場合の借入金利子
アパートの新築にかかる借入金利子は、所得税法第37条 ( 必要経費
) の規定を厳密に解釈
すると、まだその新築するアパートについて家賃収入がないことから、不動産所得の金額の計算上、
必要経費に算入することはできず、資産の取得価額に算入されます。
しかし、新規にアパート経営を始めるのではなく、既に別のアパートを所有し、不動産所得が生じる
ような業務を行っている場合には、新しいアパートを建築することも業務の拡張行為であると考える
ことができます。
したがって、その場合の借入金利子は、不動産所得を生ずべき業務を遂行する上で生じたものと
して、その支払った年分の必要経費に算入することができます。
労働組合主催の運動会への援助金
労働組合のレクリエーション活動として、組合の役員と組合員、その家族等が参加する、労働組合
主催の運動会が開催されることがあります。そのような場合、会社がその運動会に援助金を支給
することもしばしばあると思います。
労働組合に対して、使用者としての立場である会社が、そのレクリエーション費用を援助すること
は、金銭の無償贈与となり、法人税法上の寄附金となります。
なお、この場合は、「一般の寄附金」として扱われ、他の「一般の寄附金」と合計して損金算入
限度額の範囲内で損金の額に算入されることになります。
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