☆ 祖父江修一税理士事務所 ☆

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資金の管理・・・キャッシュフロー経営

最近、キャッシュフロー経営が、いわれていますが、ポイントは次の点にあります。
 「最後の頼みの綱は、キャッシュ(現金)である。企業が本当に使えるお金は決算報告書上の利益の額ではなく、税金を払い、さらには配当をしたあと残ったキャッシュの額である」という点です。

  売上増加がお金の不足へ                

先の営業活動に伴うお金の出入りを次のように表してみます。

(A)〔売上高−仕入高〕(B)〔売上債権の増加額−仕入債務の増加額〕

 ここで(A)の部分は、通常売上高に対する仕入原価あるいは製造原価の比率はあまり大きく変動しません。したがって、ある期に売上が伸びるとすれば、その増加額に比例してその差額は増加する。つまり(A)の額だけ資金が流入します。
 しかし、そのお金は自由に使えるかといえばそうではありません。その差額は、人件費やその他の経費の支払のためのものだからです。使えるお金はそれらの経費を差し引いたあとの利益の額だけですから、普通の企業では微々たるものかもしれません。

 その一方で、売上が増えれば、(B)の部分はかなりの額が増加します。というものの普通には、手形の期間だけでも何ヶ月にもなるのですから、売上高の増加分の数か月分となり、それだけの期間、お金は入らないということです。
 もちろん、仕入の方も事情は同じです。つまり、その分、仕入先へしわ寄せできると支払うお金は少なくて済みます。しかし、売上高は必ず仕入高よりも大きいから仕入先にしわ寄せできるのはその一部だけです。結局のところ、(B)の算式の差額分だけ、売上が増えたために、お金は足りなくなるのです。
 (A)の金額のうち使えるお金はわずかに利益の額だけ、それに対して(B)は、売上高と仕入高の差額の数ヶ月分となります。(A)は経費の支払に当てるから、残りはわずかです。そのため売上が増えるとの額だけお金が不足することになります。この(B)として算出される額が運転資金です。
 さらに、在庫の増加額は売上が増えれば増加分を補うべく在庫を持つことになり資金を流出させます。

  売上減少がお金の不足へ                
 今はむしろ、企業は売上が減少しているときです。その場合は、お金はどうなるでしょうか。
 売上が増加するとき、お金が必要になるとすれば、逆に売上が減少するときは、お金が余ってくるというのが理屈です。
 しかし、現実には売上が減少するときほどお金が必要です。このことを考えてみましょう。
 売上が減少するときは、赤字となっています。赤字とは、多くの場合お金が流出していることです。先に、利益の額は資金繰りにあまりプラスにならない、と言いました。しかし、赤字となれば、その赤字の額だけたちまち響いてきます。
 売上と仕入の差は、ほとんど経費に費やされます。しかし、売上が減ったとき、その差額(仕入原価70%とすれば、売上が1億円減少すれば、3千万円分)だけ経費が減るわけではありません。売上が減っても経費はすぐに減らせません。したがって、少なくともその差額だけ赤字となります。もちろん、ただちに人員整理を含むさまざまな手を打つわけですが、少なくとも決着がつくまでの間、会社から流出します。
 また、そのようなときは、在庫もなかなか、はけません。いや、売上が減少しているということは、手を打つのが遅ければ、その分在庫が増えているということです。つまり、売上が減少したが、それに比例して仕入は、減っていない。在庫の増加とは、先にも見ましたように、ますますお金が不足するということです。
  売上減少は割引手形の減少に             
 加えて、多くの中小企業の場合、受取手形のほとんどは割り引いてお金に換え、そのお金を使っています。そのような企業で、売上の減少はストレートに割引きする受取手形の減少につながります。そして、割り引く手形の減少は、たちまち、お金の調達ができなくなるということです。
 企業は売上高が減少するということは、赤字幅以上の対策が要求されますし、それが落ち着く(それに伴う赤字の解消)まで、資金繰りを一層苦しくするとご理解ください。

 参考までに、売上が減少するときの必要運転資金の算出について事例を紹介いたします。

売上が減少するときの必要運転資金の算出例

〈販売条件〉
@ 売上はつき100百万円減少する見込み
A 売掛金の期間は1.5ヶ月
B 売掛金の決済は現金10%、受取手形90%、手形のサイトは3ヶ月

〈仕入条件〉
@ 原材料費は売上の30%
A 買掛金の期間は1.7ヶ月
B 買掛金の決済は現金10%、支払手形90%、手形のサイトは3ヶ月

 売掛金 −150  減少額 100百万円×売掛期間1.5ヶ月
 受取手形 −270  減少額 100百万円×手形で受け取る割合90%×サイト3.0ヶ月
 計 (A) −420
 買掛金 − 51  材料の仕入れ減少額100百万円×原材料費30%×買掛期間1.7ヶ月
 支払手形 − 81  仕入減少額30百万円(100百万円×30%)×手形で支払いの割合90%×サイト3ヶ月
 割引手形 −270  受取手形の減少額から割引する手形がない
 赤字額 −210  70(売上100−原材料30)×3ヶ月
 計 (B) −612
 必要運転資金=(A)−(B)=192百万円

 

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