☆ 祖父江修一税理士事務所 ☆

[ ホーム ] [ 税務だより ] [ ザ☆経営 ] [ 業務内容 ] [ 連絡先・周辺地図 ]

倒産回避への財務分析

売上高拡大から利益率の時代へ

【土地神話の崩壊】
所有する土地の価格が永久に上がっていけば、借金はいつでも返せると企業側は思い、銀行側も返済を催促することはありませんでした。また、利益がでなくて、借金が返せない企業には、追加融資をして、不足する資金の融資をするといった資金繰り償還があたりまえとなっていました。
しかし、今や、土地神話が完全に崩壊しました。そこで、企業に返済能力があるかどうかが、真に問われる時代となりました。

【土地の下落を貸しはがし】
現在、流通・建設・不動産が危ない産業とされていますが、返済能力という尺度からみれば、医薬品メーカーを除き、全産業に問題となる企業が二割くらいあるとされています。こうした借金体質の企業が市場で淘汰されれば、これまで不良債権処理をしてこなかった地銀や第二地銀にまで影響が及ぶこととなります。地価はますます下がり、下げ止まる気配も感じられません。土地の存在を前提としていた融資は依然として銀行の足を引っ張ります。日本企業の多くは低収益体質にどっぷりと漬かってしまっているのです。
その最大の理由は、供給過剰が原因であることは周知の事実です。傾向としては巨額の負債を返済できない企業から、順にマーケットから撤退せざるをえません。金利が極端に低い現在では、債務超過でさえ、あまり意識されませんが、いずれくる金利上昇の局面では巨額の負債をささえきれなくなります。企業の収益構造が改善され、利益が回復してくるまで淘汰は続きます。
所有する土地の価格が上がっていけば本業の利益が落ち込んだとしても、その土地を売りさえすれば借入金は返せます。貸し手の銀行側も、借入金の返済を催促するようなことはありませんでした。そして、こうした資金の循環こそが日本の経済成長を支えてきた事実もあるのです。
しかし、土地神話の崩壊により、銀行は融資先の企業が返済能力を有しているか否か、それをあらためて問うことになり、自らの生き残りのため、「貸しはがし」と酷評される借入金の返済(回収)を求め始めました。だが、地価下落で、企業は土地を売っても借金を返せない、評価額が下がれば、追加融資はおろか、借り換えもできない。気がつけば、まさに気の遠くなるような巨額の借金だけが残ってしまったというのが現状です。
平成9年以降、名目GDP(国内総生産)に対する倒産企業の負債総額は3%弱で推移していたものが、平成12年になると5%近くまで上昇しました。日本のいままでうまくいっていたビジネスモデルの崩壊が数字でも表されました。

【資金体質の確認】
伝統的な分類では、資金は流動資金と固定資金とに分類されます。
流動資金、固定資金でもその源泉内容は、有利子負債とそれ以外のものに分かれます。
貸借対照表はその左側に資金の運用を、右側に資金の源泉を表し、左右に因果関係を持っております。
この源泉部分に着目してみると資金が不足する体質か否か(銀行借入の依存度)を比率をもって示すことができます。

【自己資本比率の工夫】
土地の評価に代わる企業の指標となるのが、次の新しい自己資本比率(自己資本を自己資本と有利子負債を合わせたもので割ったもの)です。
貸借対照表は様々な情報を提供してくれますが、ただ漠然と眺めているだけでは何も教えてくれることはありません。見方を工夫しなければなりません。
伝統的な安全性分析と工夫された自己資本比率を示すと次のようなものとなります。
売上第一主義の時代においては、売上拡大が中心で、もっぱら売上目標が第一で利益は結果として算出されるという認識でしかありませんでした。経営者はいわゆる節税の名の下で、算出される利益を圧縮することに関心がありました。
損益計算書は売上高から各段階の費用を差し引き、各段階の利益を計算します。結果として、最終段階において、当期利益あるいは当期損失が明らかになるように作成されている点から、中小企業の経営者にとってわかりやすいものとなっています。
逆に貸借対照表は企業の経営成績を説明するには、わかりにくいものとなっています。
今後は貸借対照表をして銀行からの借入依存度を測定することが中心になります。すなわち、経営者は自己資本比率をいかに高めるかが経営上大事な点となるからです。
自己資本を形成している重要な要素は利益であります。では、利益はどのように分析したらよいのでしょうか。企業の利益吸収構造を理解するにはいわゆる損益分岐点売上高を算出することです。

伝統的な安全性分析と工夫された自己資本比率
(  )内は一般的な見方を示しています
1.流動比率=流動資産/流動負債 (200%以上が良い)
2.当座比率=当座比率/流動負債 (100%以上が良い)
3.固定比率=固定資産/自己資本 (100%以下が良い)
4.固定長期適合率=固定資産/自己資本+長期借入金 (100%以下が良い)
5.伝統的な自己資本比率=自己資本/総資本 (できるだけ夫きい方が良い)
6.工夫した自己資本比率=自己資本/(自己資本+有利子負債) (銀行借り入れ依存度を測定する)

【自社の損益分岐点の把握】
利益が増加すれば自己資本は増加します。このために、利益を効率的に吸収することができる利益増加体質を創っていく必要があります。
損益分岐点売上高は比率ではありませんから、この数値に判断を求めるのは客観性に欠けるきらいがありますので、損益分岐点比率を求め、判断をするようにして下さい。
例えば、損益分岐点比率が90%のときは、経営安全率は10%となります。合計すれば100%となります。

損益分岐点売上高=固定費/(1-変動費/売上高)

損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高/実際の売上高X100

【経営改善への利用】
損益分岐点比率を改善するには、固定費の削減と変動費の改善であることがわかります。
デフレ進行の中にあっては、売上高の量的上昇ではなく、利益率の改善に尽くすのが特筆すべき経営者の役割となっています。

 

HOME

MAIL