日本の会社の約95%は同族会社といわれ、課税上,特別な規定が設けられています。
これは少数の株主(社員)によって会社が支配されていることから、他の会社と比較して課税の不公平を生じさせないための調整策とされていますが、わかりにくい点も多いので以下ポイントを整理してみます。
同族会社とは、株主等の3人以下ならびにこれらと特殊の関係のある個人および法人が発行済株式(出資)の50%以上を保有している会社をいいます。
簡単にいうと、A株主とその親族等で取得する株式状況をA株主グループといい、このような株主グループが3つ以下で会社の株式の50%以上を支配している会社を同族会社ということになります。
同族会社に該当すると次の3つの特別規定が適用されます。
@同族会社の特別税率(留保金課税)、A同族会社の行為・計算の否認、B同族会社のみなし役員
(1) 特別税率が課される趣旨
同族会社の株主構成が親族間で成り立っているところから、不当に配当を抑え株主個人の所得税を免れようとすることを防止するために設けられています。
(2) 規定の内容
同族会社について、図表に示すように各事業年度の所得のうちの留保金額から留保控除額を差し引いた残額に対し、10〜20%の税率で追加課税する仕組みとなっています。
なお、同族会社の判定は、期末時点の状況により、同族会社の判定の基礎(上位3グループ内)に非同族会社を含んでいる場合には、留保金課税の対象とはなりません。
(3) 平成12年度改正点
中小・ベンチャー企業の自己資本の充実の観点から、次の法人について留保金課税が2年間停止となります。
@ 設立後10以内の新事業創出促進法の中小企業者
A 新事業創出促進法の認定ベンチャー企業
(注1)@については、中小企業の定義の拡大により、全法人の99%以上が対象となります。
(注2)Aは創業からの年数を問わず、大企業も対象となります。
(1) 設定の趣旨
この制度は、同族会社が少数の株主により支配され、その意思により法人と株主等の間で低額譲渡、高額買入などにより法人税の負担を不当に免れることを避けるために設けられています。
(2) 規定の内容
税務署長は、同族会社に係る法人税につき更正または決定をする場合において、その法人の行為または計算でこれを容認した場合に、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為または計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準もしくは欠損金額または法人税額を計算することができるとされています。
なお、同族会社かどうかは、行為または計算のあった時の現況で判断されます。
(3) ケーススタディー
@ 逆さ合併の事例
会社の合併が黒字優良会社と赤字欠損会社とで行われる場合、正常に考えると黒字会社が合併会社、赤字会社が被合併会社となります。ところが、法人税基本通達により、被合併会社の繰越欠損金は、合併新会社の所得の計算上、損金算入できないとされているところから、赤字会社を合併会社、黒字会社を被合併会社とする、いわゆる逆さ合併が行われることがあります。
この逆さ合併について、行為計算の否認規定により否認した判例があります。
登場する会社は次のような状況でした。
・合併会社たるA社は経営実態のない赤字会社で、被合併会社たるB社は黒字会社
・合併後は、商号・事業目的・会社の所在地も、被合併会社B社のそれに変更され、実質上も合併会社A社の事業実態は消滅している。
この場合、法形式はともかく、合併の経済的実態は黒字会社による赤字会社の吸収合併であり、赤字会社の実態がないので、否認も仕方ないと思われます。
赤字欠損会社に、資産価値のある商号やのれん、ノウハウ等がある場合に、これを引き継ぐための会社であるとか合理的な理由があれば、行為計算の否認は無い可能性が高いと考えられます。
A 低額譲渡の事例
同族会社である納税者が、関連会社に販売したコンクリート矢板の販売価額が、通常の場合に比較して著しく低額であるとして、行為計算の否認を適用された
H 使用人退職金の事例
スーパーマーケットの店長格の従業員に対して支給された退職金の算定および支給の根拠が、不自然かつ不合理であるとして、行為計算の否認により、適正額を超える金額の損金算入が否認された
C 高価買入の事例
個人事業の法人成りに際し、資産の引継価額を時価を超えて行ったとして行為計算の否認により、時価超過部分は貸付金とされた
(1) 設定の趣旨
同族会社において実質的な経営従事者を名目上使用人あるいは使用人兼務役員とすることにより、その山賞与の損金算入を図ったり、退職給与引当金勘定への繰入を図ったりすることを防止するために設けられてい
ます。
(2) 規定の内容
同族会社の使用人のうち、出資等の一定の要件のすべてを満たしている者で、その会社の経営に従事している者は役員(使用人兼務役員でない)となります。
Q 当社では、超過操業によって通常程度を超えて使用される機械装置があります。このような場合、減価償却について、増加償却ができると聞きましたが、どのような内容なのでしょうか。
A 増加償却とは、操業度の上昇により、機械及び装置の使用時間が、その機械及び装置について通常の経済事情における平均的な使用時間を超えている場合に、一時的に減価償却額の割増を認める制度です。
増加償却の対象となる機械及び装置は、定率法または定額法を適用しているものに限られます。
増加償却が認められるのは、増加償却割合(当期における機械装置の1日当たりの超過使用時間に3.5%を乗じて計算した割合、小数点以下2位未満の端数は切り上げ)が10%以上になる場合です。「1日当たりの超過使用時間」の計算は、取得価額加重平均法または単純平均法のいずれかの方法によります。
増加償却を適用した場合の償却限度額は、通常の償却限度額×(1+増加償却割合)となります。
増加償却を適用する場合には、機械装置ごとではなく、耐用年数省令に定める設備の種類(細目の定めのあるものについては、細目)ごとに適用することになっています。ただし、2以上の工場に同一の種類に属する設備を有する場合には、工場ごとに適用することができます。
増加償却の適用を受けようとする場合には、「増加償却の届出書」を適用を受けようとする事業年度の確定申告書の提出期限までに所轄税務署長に提出する必要があります。この届出書は、適用を受けようとする事業年ごとに毎期提出することになります。
なお、添付書類は特にありませんが、超過操業を行ったことについて証明できる書類の保存義務があります。
震災、風水害、落雷、火災その他の災害によって、住宅または家財に甚大な被害を受けた場合には、災害減免法によって、その年分の所得税の額が軽減または免除されます。
災害減免法による減免の適用が受けられるのは、納税者の所有する住宅または家財が災害によって損害を受け、その損害金額(保険金等によって補填された金額を除きます)が住宅または家財の時価の50%以上であり、損害を受けた年分の合計所得金額が1,000万円以下である場合です。
なお、その災害による損害額について、雑損控除の適用を受ける場合は、減免の適用は受けられません。
減免額は次のとおりです。
@ 合計所得金額が500万円以下である場合…全額免除
A 合計所得金額が500万円超750万円以下である場合…50%軽減
B 合計所得金額が750万円超1,000万円以下である場合…25%軽減
★税金一口メモ★
相続税の最高税率
平成12年度の税制改正で相続税の最高税率(70%)の引下げが見送られました。
ここ数年で、欧米諸国と比較して高すぎるという批判のあった所得税や法人税の税率が相次いで引き下げられており、今回の改正では相続税の税率が魚点となっていました。小渕総理大臣が、引下げの意向を表明しましたが、結果的には来年度以降の検討事項として持ち越されました。
控除や税率の刻み数などがあって単純に比較することはできませんが、相続税の最高税率だけでみると、日本の70%は、アメリカの55%、イギリス・フランスの40%、ドイツの30%と比べて高い水準にあるのは間違いないようです。