☆ 祖父江修一税理士事務所 ☆

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2000年9月

ワンポイント 不当廉売
 採算を度外視した低価格で継続して販売することにより、競争相手の事業活動を困難にすること。不当廉売に当たると公正取引委員会が判断すると「注意」、事業者名が公表される「警告」、安売りを中止しないと罰金刑が科される「排除勧告」が行われます。平成11年度は、注意が672件、警告が2件、排除勧告は0件でした。

上場株式等の源泉分離課税の見直し

 平成11年度の税制改正により、上場株式等に係る譲渡所得等の源泉分離課税制度が廃止され、来年4月1日より申告分離課税に一本化されることになっています。
 実施まで後半年と迫ってきましたので、もう一度制度の内容を確認するとともに、疑問の生じやすい点についてQ&Aでポイントを整理してみます。
Q1 従来の制度の内容はどのようなものですか。またなぜ改正されるのですか。

A 
1 従来の制度の概要

 平成13年3月31日までは、個人が上場株式等を証券会社等を通じて譲渡した場合、@とAを取引ごとに選択することが認められています。

@ 申告分離課税方式
    株式等の譲渡等による所得金額×26%(所得税20%、住民税6%)

A 源泉分離課税方式
    株式等の譲渡価額×1.05%(転換社債等は0.5%)

2 改正の背景

 一連の金融システムの改正(日本版ビックバン)の流れの中で、税制においても有価証券取引税等が廃止され、その条件として株式譲渡益課税の適正化(申告分離課税への一本化)が決められました。
 株式の譲渡所得に対する源泉分離課税制度は、株式の譲渡所得が株式譲渡価額の5.25%(転換社債等は2.5%)とみなして、税額を算出します。
 その結果、譲渡価額×5.25%×20%=譲渡価額×1.05%(住民税は非課税)となっています。
 このため、源泉分離課税を選択すると、申告分離課税の場合と比較して節税となる場合があります。そこで、有価証券取引税等を廃止する条件として、源泉分離課税も取りやめることとなりました。
 ただし、株式市場への影響を考慮して上場株式等にかかる源泉分離課税制度については、平成13年3月31日まで引き続き適用した後で廃止することになっています。

Q2 源泉分離課税を選択すると、申告分離課税の場合と比較して節税をなる場合があるということですが、具体的にはどういう場合ですか。

A 
 源泉分離課税の税率1.05%÷26%=4.03%なので、概算ですが収入に対する所得の割合が4%以下の場合なら申告分離課税のほうが有利、5%以上の場合なら源泉分離課税のほうが有利といえるでしょう。下の計算例では、所得割合を@が4%(取得費等96%)、Aが5%(取得費等95%)として比較しています。

譲渡収入100万円と仮定
 @ 取得費・譲渡費用合計が96万円とした場合
    申告分離課税方式
    (100万円−96万円)×26%=1.04万円(有利)

    源泉分離課税方式
    100万円×1.05%=1.05万円

 A 取得費・譲渡費用合計が95万円とした場合
    申告分離課税方式
    (100万円−95万円)×26%=1.3万円

    源泉分離課税方式
    100万円×1.05%=1.05万円(有利)

Q3 申告分離方式となった場合、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて所得金額を算出するとのことですが、取得費や譲渡費用には、どのようなものがありますか。

A 
 収入金額から差し引けるものとしては、取得費、取得費に加算される相続税、取得のための負債の利子、譲渡のための委託手数料があります。

Q4 株式等の取得価額は、どうすれば知ることができますか。また、不明の場合はどうなりますか。

A 
 @「取引報告書」がある場合
 証券会社から送られてきた取引報告書があれば確認がもっとも容易です。(今後は大切に保管しておきましょう)。

 A「取引報告書」は紛失したが、取引証券会社がある場合
 株式等を取引した証券会社が保存している「顧客勘定元帳」等により、取得価額を確認することができます。

 B相続で株式を取得するなど、取引証券会社がない場合
 株券の裏面や発行会社(証券代行会社)にある株主名簿を調べたり、預金通帳の支払日の記載や日記帳の手控えなどから取得時期を調べ、その時期の相場については、証券会社等のデータベースや当時の新聞情報から知ることができます。

 C取得価額がどうしても不明の場合
 譲渡収入の5%相当額を取得価額として取り扱ってよいことになっています。

Q5 いわゆるクロス取引といわれるものは、問題がありませんか。

A 
 同一の銘柄の上場株式について、証券会社を通じて売却し、再び買った場合、これをクロス取引と呼んでいます。
 証券市場を通じた正規の取引なので、平成13年3月31日までの間は、源泉分離課税の対象とすることができます。また、この取引によって買い戻した株式の購入価格が、その後の譲渡の際の取得価額となります。

 

Q6 外国の株式譲渡益課税は、どうなっていますか。

A 
 株式譲渡益課税については、実際の譲渡益を課税対象とするのが基本であり、わが国の源泉分離課税制度のように、譲渡代金から算出した、みなし譲渡益を課税対象とする仕組みは、諸外国にはみられない制度です。

Q7 源泉分離課税制度の廃止が延期されるかもしれないと聞きましたが?

A 
 そのような動きがあるようですが、いずれにしろ年末に公表される税制改正大綱で、どうなるか明らかになるでしょう。

 
借地権の使用貸借

 私は、現在、借地の上に住宅を所有しています。敷地に余裕があるため、地主の承認を受けて、同一敷地内に子供が別棟の住宅を新築することになりましたが、子供から権利金や地代を受け取るつもりはありません。
 税務上の問題はないでしょうか。

A 借地権者からその借地権の目的となっている土地の一部を使用貸借により借り受けて、その土地の上に建物を建築した場合には、その借地権の価額はゼロとして取り扱うこととされています。
 したがって、権利金も地代も収受しない民法上の使用貸借の関係であることが確認されれば、借地権の使用貸借に係る使用権の価額はゼロとして取り扱うこととなるため、子供に譲与税が課税されることはありません。
 ただし、この取扱いは個人間の賃貸借関係を前提としており、当事者の一方が法人の場合には適用されません
 実務的には、使用貸借であることを確認するために、「借地権の使用貸借に関する確認書」を使用することになります。
 この確認書には、借地権者と建物の所有者が連名で使用貸借であることを確認し、土地の所有者(地主)の確認を受けて、建物の所有者の住所地の所轄税務署長に提出することになります。
 ただし、子供が地代等を支払う場合には、その貸借は使用貸借に該当せず、借地権の転貸借となり贈与税の課税関係が生じますので注意する必要があります。
 なお、使用貸借に係る借地権について、将来相続が発生した場合には、子供の建物の敷地部分も含めて、すべて自用借地権として評価することになります。

 
災害等による申告期限の延長

 法人税の確定申告書の提出期限は、事業年度終了の日から二ヶ月以内とされていますが、災害その他やむを得ない理由によって申告期限までに決算が確定しない場合には、所轄税務署長の承認を受ければ、申告期限の延長時の適用を受けることができます。
 適用を受けるためには、事業年度終了の日の翌日から45日以内に、「申告期限の延長申請書」に、申告期限延長の指定を受けようとする期日、確定申告書の提出期限までに決算が確定しない理由、指定を受けようとする期日までその提出期限の延長を必要とする理由等を記載し、やむを得ない事由を証する書類(罹災証明証など)を添付して、所轄税務署長へ提出します。通常の確定申告書の提出期限までに承認または却下の処分がない場合には、自動的に承認されたものとなります。
 なお、申告期限の延長が認められた場合には、延長された期間について利子税を納付する必要があります。

 

税金一口メモ
 介護保険料の控除

 4月から介護保険制度がスタートし、第二号被保険者(40〜64歳)から介護保険料の徴収が始まっています。また、第一号被保険者(65歳以上)については10月から介護保険料の徴収が始まります。
 これからの介護保険料については、所得税の計算上、健康保険料や厚生年金保険料など同様に社会保険料控除の対象になります。
 したがって、本人または同一生計親族が負担することになっている介護保険料を支払ったり、給料から天引きされた場合には、その全額を総所得金額等から控除することができます。
 なお、社会保険料控除の対象になるのは、その年中に実際に支払った(天引きされた)介護保険料の額となります。

 

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