相続は、親族の突然の死亡から開始し、葬儀、法要と行事が続くことから、相続開始から相続税の申告期限までの間は、意外と短かく感じるようです。よって、相続税の申告手続は、できるだけ早めに、かつ、相続人全員の協力のもとに円滑に進める必要があります。
1 申告までのスケジュール
おおむね下の図表のようになります。特に期限として3か月以内、4か月以内、10か月以内とされているものにはくれぐれも注意が必要です。
2 通夜から法要までの留意点
様々な非日常的な支出が発生しますが、後で相続税の計算上遺産から控除されるものがありますので、十分整理しておく必要があります。
特に葬儀の費用、通夜の費用など葬式に要した費用は控除されますが、次のようなものは控除できません。
@香典返しの費用
A墓地や墓石の購入費用または墓地の借入料
B初七日その他法要などのための費用
なお、原則として領収書が必要ですが、お布施、戒名料等で領収書が収受できなかった場合には、支払先、住所、支払年月日、支払金額をメモしておけば控除できますのであきらめずにメモしておくと有効です。
3 遺言があった場合
遺言があると原則として遺言に書かれている内容により遺産分割が行われます。ただし、近親者の相続期待利益を保護し、また被相続人死亡後の遺族の生活を保障するために、兄弟姉妹以外の相続人には、法定相続分の2分の1を最低保証一直系尊属のみが相続人の場合は3分の1を最低保証)することになっています。これを遺留分といいます。
4 相続の放棄・
限定承認
@ 相続の放棄
相続の放棄をすると初めから相続人でなかったものとみなされます。
特に遺産より債務の方が多いような場合には、決断が重要となります。
A 限定承認
相続によって得た財産を限度として被相続人の債務を引継ぐことを限定承認といいます。この制度は、被相続人の債務がどのくらいあるか不明の場合、相続人が不測の損害を被らないために設けられた制度ですが、相続人全員が共同して家庭裁判所へ申述する必要があります。
5 準確定申告
相続があった場合、相続人は、相続があったことを知った日から4か月以内に被相続人の所得について、所得税の確定申告をしなければなりません。
なお、青色申告の承認を受けていた被相続人の業務を相続したことにより、新たに不動産所得、事業所得を生ずべき業務を開始した相続人が提出する青色申告の承認申請についても準確定申告と同じ期限になっています。
6 相続税の申告期限
相続開始から10か月以内に、遺産や債務の調査をし、評価し、遺言書がない場合で相続人が複数いる場合には、遺産分割協議書を作成し、遺産の名義変更手続を行うとともに、相続税の申告・納付を行うことになります。