本年の税制改正は例年に比べ身近な項目が多くあります。適用のポイントをQ&Aで以下整理してみます。
Q.
創設される相続時精算課税制度の概要を教えてください。また、適用対象者はどうなっていますか。
A.
相続時精算課税制度とは、生前贈与について、受贈者の選択により、贈与時に贈与財産に対する贈与税を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に計算した相続税額から、すでに支払った贈与税を控除することにより、贈与税・相続税を通じた納税をすることができる制度です。
この制度の適用対象となる贈与者は65歳以上の親、受贈者は20歳以上の子(代襲相続人を含む)とされています。
Q.
適用手続はどうなっていますか。
A.
この制度の選択をしようとする受贈者(子)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に所轄税務署長に対してその旨の届出を贈与税の申告書に添付することにより行います。
なお、この選択は受贈者である兄弟姉妹が各々、贈与者である父、母ごとに選択できるものとし、最初の贈与の際の届出により相続時まで継続して適用されます。
Q.
適用対象財産の範囲はどうなっていますか。
A.
贈与財産の種類、金額、贈与回数等については制限がありません。
相続税の税率は、最高税率が70%から50%に下がり図表1のようになります。
図表1
法定相続人の取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
0万円 |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
3億円以下 |
40% |
1,700万円 |
3億円超 |
50% |
4,700万円 |
相続時精算課税制度の対象とならない贈与財産に係る贈与税の税率については、最高税率が相続税同様70%から50%に下がり、図表2のようになります。
図表2
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
0万円 |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
600万円以下 |
30% |
65万円 |
1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,000万円超 |
50% |
225万円 |
Q.
親以外から贈与を受けた場合の贈与税はどうなりますか。
A.
相続時課税制度の対象とならない贈与は一括して図表2の贈与税率を適用します。
Q.
特例の内容を説明してください。
A.
相続時精算課税制度について、自己の居住の用に供する「一定の家屋」を取得する資金又は自己の居住の用に供する家屋の「一定の増改築」のための資金の贈与を受ける場合に限り、65歳未満の親からの贈与についても適用されます。また、これらの資金の贈与については2,500万円の非課税枠(特別控除)に1,000万円を上乗せし、非課税枠が
3,500万円とされます。
Q.
「一定の家屋」とはどういう家屋ですか。
A.
次の要件を満たす家屋をいいます。
@ 新築又は築後経過年数が20年以内(一定の耐火建築物である場合には25年以内)であること
A 家屋の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積))50平方メートル以上であること
B その他所要の要件を満たすこと
Q.
「一定の増改築」とはどういうものですか。
A.
一定の増改築とは、その者が所有する家屋について行う増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替その他の工事で次の要件を満たすものをいいます。
@ 増改築の工事費用が100万円以上であること
A 増改築後の家屋の床面積(区分所有の場合にはその区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上であること
B その他所要の要件を満たすこと
Q.
土地売買に伴う登録免許税は5分の1と激減したのですか。
A.
従来は、課税標準を固定資産課税台帳の登録価格の3分の1とする特例があったため、名目5%ですが、実質はその3分の1の1.67%ぐらいでした。
今回の改正では、平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間の措置として1%になりますので、下がりますが、その後2%になりますので、ご質問ほどの変化はありません。
Q.
住宅ローン控除の適用が緩和されたそうですが内容を教えて下さい。
A.
住宅の取得等をして住宅ローン控除の適用を受けていた居住者が、勤務先から転勤の命令その他これに準ずるやむを得ない事由によりその住宅を、平成15年4月1日以後に居住の用に供しなくなった後、その事由が解消し、再びその住居に入居した場合には、一定の要件の下で、住宅ローン控除の適用年のうちその者が再入居した年以後の各適用年について、住宅ローン控除の再適用を受けることができるようになります。
Q.
配偶者特別控除は完全に廃止されるのですか。
A.
配偶者控除に上乗せして適用される部分が廃止となっただけで、配偶者控除に替って調整される部分の配偶者特別控除は存続しています。
なお、この改正は平成16年分以後の所得税について適用されます。 |