証券税制の見直しが平成13年から始まり、14年、15年と毎年手直しが続いているため、わかりにくいという声が多く聞かれます。そこで、現時点での金融、証券税制をQ&A方式で整理してみます。
Q.
株価の低迷もあってか最近上場株式等の譲渡税率が下がったそうですが、どのように変化してきているのか教えてください。
A.
株式等の譲渡に係る所得については、昭和63年12月の税制の抜本的改正において、それまでの原則非課税から課税に改められています。課税方式としては、@確定申告により他の所得と分離して課税される申告分離課税と、A源泉徴収により課税関係を終了させる源泉分離課税の2つの制度とされていました。
その後平成11年度に有価証券取引税及び取引所税が廃止されたことに伴い、株式等譲渡益課税について申告分離課税に一本化するため、源泉分離課税の廃止が決められました。実際には経過措置が平成14年12月31日まで続いたため、申告分離課税に一本化したのは平成15年1月1日からとなります。
税率は譲渡益に対して26%であったものが平成14年改正で平成15年1月1日以後に上場株式等を譲渡した場合には原則として20%(所得税15%、住民税5%)となりました。ところが株価の低迷が深刻となっている経済状況から、平成15年度改正で、図表1にあるように、平成15年から19年までは10%(所得税7%、住民税3%)とさらに優遇しています。
この改正は、預貯金等の利子に比べて高かった税負担を同じにするためのものですが、景況感が悪いので、5年間に限り税率をさらに半分にしたものです。
なお、上場株式等以外の株式の譲渡益に対する税率は26%のまま変わっていませんので注意が必要です。
Q.
所有期間1年超保有の上場株式を譲渡した場合、年間100万円までの譲渡益が非課税になるという制度はどうなったのですか。
A.
平成14年度改正においては、期間限定の減税措置として、次の3つの制度が設けられました。
@ 保有期間1年超の上場株式等の軽減税率(10%)
A 保有期間1年超の上場株式等について、年間100万円までの非課税措置
B 緊急投資優遇措置
このうち、@とAについては、平成15年改正で譲渡税率が10%になったことに伴い廃止されています。
Q.
緊急投資優遇措置を教えてください。
A.
平成14年の株式新税制の目玉とされていたものであり、次の3つの条件を満たした場合、購入代金1千万円までの株式がどんなに高騰してもこれに伴う譲渡益をすべて非課税にする制度で、この制度は変わっていません。
@ 平成13年11月末から平成14年12月末までに取得
A 平成15年から平成16年は保有継続
B 平成17年から平成19年の3年間に売却
なお、@の取得額が1千万円以上で複数の銘柄に投資していた場合1千万円になるまで、銘柄、株数を任意に選択できます。
Q.
上場株式に係る譲渡損失の繰越はできますか。
A.
平成15年1月1日以後に上場株式等を譲渡したことにより生じた損失の金額のうち、その年に控除しきれない金額については、翌年以後3年間にわたり、株式等にかかる譲渡所得等の金額から繰越控除できます(図表2参照)。
Q.
上場株式等の配当に対する税金はどうなりますか。
A.
源泉徴収税率が図表1のように、平成15年4月1日より10%、平成16年1月1日より住民税にも配分するため所得税7%、住民税3%とする時限措置がとられます。
Q.
上場株式等の配当所得についての申告不用制度はどうなりましたか。
A.
従来は1回の支払が5万円(1年で10万円)以下の場合のみ申告不要が認められていましたが、平成15年4月1日以降、上限がなくなりましたので、どんなに高額でも申告が不要となります。
もちろん、配当控除等申告をした方が有利な場合には申告をしても構いません。
この改正により35%源泉分離選択課税の特例も廃止されています。また、平成16年から住民税についても申告不用制度が創設されます。
Q.
株式投資信託課税も変わっていますか。
A.
平成16年1月1日から平成20年3月31日までの間に支払を受ける収益分配金については、図表1のように上場株式等の配当と同様に10%の課税とされています。
図表1 上場株式等の譲渡益・配当課税の概要