源泉徴収については、契約形態が多様化・国際化したものや給与以外については難しく感じる人が多いようです。そこで迷いやすいポイントをQ&A方式で整理してみます。
Q.
当社は建設業を営む法人ですが、毎月、労務の対価の支払をする際に、源泉徴収をする者と個人事業者ということで源泉徴収をしない者がいて、処理の基準があいまいになっています。実務上どのように判断すべきでしょうか。
A.
給与所得とは、雇用契約に基づき、雇用主の指揮命令に従って提供した労働の対価をいいます。これに対して事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続するものとされています。
具体的には、一般に次の図表に示す項目を総合勘案して判断し、給与所得に該当したら源泉徴収が必要となります。
判定 |
|
役務内容 |
|
判定 |
給
与
所
得 |
← |
雇
用
契
約
等
に
基
づ
く
労
務
の
対
価 |
NO
←
|
@当該契約の内容が他人の代替を容れるか |
YES
→ |
請
負
契
約
に
基
づ
く
労
務
の
対
価 |
→ |
事
業
所
得 |
|
YES
← |
A仕事の遂行に当り個々の作業について指揮監督を受けるか |
NO
→ |
|
|
YES
← |
Bまだ引渡しを終わっていない完成品が不可抗力のため滅失した場合等において、その者が権利として報酬の請求を行なうことができるか |
NO
→ |
|
|
YES
← |
C材料が提供されているか |
NO
→ |
|
|
YES
← |
D作業用具が供給されているか |
NO
→ |
|
Q.
当社の役員であるAが8がつに死亡し、役員退職給与規定によりAの妻にAの死亡退職金を支払うことになりました。この支払にさして源泉徴収は必要でしょうか。
A.
退職金の支払に際しては、原則として退職所得に係る源泉徴収が必要となりますが、死亡時に支払う退職金については源泉徴収の必要性はありません。
その理由として、死亡退職金は相続税法の規定により取得したものとみなされるため所得税はかからないからです。その代わり、被相続人に支払われるべきであった退職金で死亡後3年以内に相続人等に支払われるものは相続税が課税されることになっています。
Q.
退職金の源泉徴収はどのように行なえばよいですか。
A.
まず、退職金に該当するかどうかを判定し、退職金であれば他の所得と分離して所得税の源泉徴収をします。
退職所得は、その年の退職金の収入金額から、その人の勤続年数に応じた退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1について課税されます。
退職金を受け取る人は、支払を受けるときまでに「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、支払者が所得税を計算して退職金から差し引いて納付します。
もし、この申告書が提出されない場合は、退職金の収入金額から一律に20%の所得税が源泉徴収され、この源泉所得税は、確定申告で精算することになります。
なお、退職所得の受給に関する申告書には、退職者の勤続期間の記入欄があり、この勤続年数により、退職所得控除額が異なります。2ヶ所以上から退職金をもらうとき、これまでに退職金をもらったことがあるときなどは、勤続年数の計算が難しいので注意が必要です。
【退職所得控除額】
勤続年数 |
退職所得控除額 |
20年以下 |
40万円×勤続年数(最低80万円) |
20年超 |
800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
※勤続年数のうち1年未満の端数があるときは「1年」として計算します。
※障害者になったことに直接起因して退職した場合は、別途100万円が加算されます。
Q.
当社は業務の縮小に伴い、社員を解雇することになり、解雇予告手当を支払いました。この取扱はどうなりますか。
A.
労働基準法の規定により、使用者が労働者に対し30日前に予告しないで解雇する場合には、30日以上の平均賃金を支払わなければならないものとされており、この規定に基づいて支払われた予告手当は、退職を基因として支払うものなので退職手当等とされます。
Q.
当社は製造業ですが、外国人労働者を雇う場合の源泉徴収について教えてください。
A.
国籍ではなく、次の「居住者」か「非居住者」かにより、課税方法が異なります。
@ 居住者
居住者とは、国内に住所を有するか又は国内に引き続き1年以上居所を有する個人をいい、この場合には、給与について日本人と同様に源泉徴収され、年末調整も行なわれます。
A 非居住者
非居住者とは、居住者以外の個人をいい、1年未満の予定で滞在している外国人や、日本人でも、国外に引き続き一年以上居住している人が該当します。
この場合には、給与の20%を源泉徴収されて課税関係が終了し、年末調整で過不足の精算をすることができません。
Q.
給与所得の税額表のうち、月給方式で支払う月額表の見方は理解できるのですが、日割りで支払う給与や日ごとに支払う給与に用いる「日額表」の見方がわかりません。説明してください。
A.
源泉徴収税額表(日額)の中の甲欄・乙欄・丙欄は次のように区分されています。
甲欄 |
『給与所得者の扶養控除等申告書』を給与の支払者に提出している者はパート等も含めて適用 |
乙欄 |
『給与所得者の扶養控除等申告書』を給与支払者に提出していないもの(日雇い丙欄適用者除く)が対象 |
丙欄 |
@日々雇用されるもの、またはAあらかじめ定められた雇用期間が2が月以内である者に対して日額又は時間給により計算して支払う給与に対して適用 |
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