減価償却については、本年大きな改正がありましたが、判断に迷うところが多いところです。そこで、一般に質問の多い点を以下、Q&A方式で整理してみます。
Q.
取得価額30万円未満の減価償却資産を、一時に損金算入できるのは、中小企業者等に限られるそうですが詳しく教えてください。
A.
青色申告書を提出する中小企業者等が、平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間に、取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得等して事業の用に供した場合には、取得価額の全額を一時に損金算入することができます。
なお、この措置は租税特別措置法による時限立法のため、従来の制度も残っています。(図表1参照)。
平成18年4月1日からは再び10万円基準に戻ることになります。
参考に、これまでの損金算入限度額の変遷を示すと図表2のようになります。
中小企業者等は、資本金1億円以下の会社ですが正確には図表3を参照してください。
図表1
取得価格 |
原則(大企業) |
特例(中小企業者等) |
10万円未満 |
全額損金算入 |
全額損金算入 |
10万円以上20万円未満 |
一括3年償却 |
20万円以上30万円未満 |
資産計上 |
30万円以上 |
資産計上 |
図表2 損金算入限度額の変遷
昭和22年度 |
1,000円 |
26年度 |
1万円 |
39年度 |
3万円 |
45年度 |
5万円 |
49年度 |
10万円 |
63年度 |
20万円 |
平成10年度 |
10万円 |
図表3 「中小企業者等の範囲」
区分 |
判定 |
資本または出資金の金額が1億円超の法人 |
非該当 |
資本または出資の金額
が一億円以下の法人 |
発行済み株式の総数または出資金額の2分の1以上が同一の大規模法人※に所有されている法人 |
非該当 |
発行済み株式の総数または出資金額の3分の2以上が大規模法人に所有されている法人 |
上記以外の法人 |
中小企業者 |
資本又は出資の金額を
有しない法人 |
常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人 |
上記以外の法人 |
非該当 |
農業協同組合等 |
農業協同組合等、中小企業等協同組合、
その他指定された協同組合等 |
中小企業者 |
※資本または出資の金額が1億円を超える法人または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く。
Q.
A社は、鉄筋コンクリート5階建ての建物を新築することにしましたが、近隣の住民から日照権の補償要求があり、1,500万円を支払うことになります。この補償金の取扱いはどうなりますか。
A.
新工場の落成、操業開始等に伴って支出する記念費用のように、減価償却資産の取得後に生ずる付随費用については、その資産の取得価額に含めないことができます。しかし、建設に伴って支出する住民対策費、公害補償費等で、当初からその支出が予定されているものについては、たとえその支出が建設後に行なわれるものであっても、その資産の取得価額に含めることになります。このことから1,500万円は建物の取得価額に含める必要があります。
Q.
所有している空き地を駐車場として貸し付けるため、整地費用として50万円、アスファルト舗装の費用として60万円を支出しました。これらの費用の取扱いはどうなりますか。
A.
土地を利用するために、測量、地盛り、地ならし、埋立て等に要した費用は、原則として、その土地の取得費用に算入することとされていますが、その土地の上に建設する建物、構築物等の基礎のための整地等に要した費用で、土地の改良のためのものでない場合には、その建物、構築物等の取得費に算入することができます。
質問の場合は、構築物(舗装路面)の取得価額として110万円を計上することができます。耐用年数は「アスファルト敷きのもの」の10年が適用されます。ちなみに「コンクリート、石敷」は15年になります。
なお、石敷きとした場合に砂利等を補充するために要した費用は修繕費となります。
Q.
B社は、当期にビルを新築し、各室に蛍光灯を取り付けましたが、蛍光管の取得に総額300万円(750円×4千本)を要しました。この蛍光管の取得価額について、小額減価償却資産の取得価額の損金算入を適用し、一時の損金とすることは可能ですか。
A.
新築時の蛍光管の取付けは建物付属設備の「電気設備(照明設備を含む)」に当ると考えられますので、蛍光管一本を一単位として、小額減価償却資産の取得価額の損金算入を適用することはできません。
なお、照明設備の使用開始後に蛍光管を取り替えるために支出した費用は、修繕費として損金に算入することができます。
Q.
C社では、6階建ての鉄筋コンクリート造りのビルを新築し、4階までは事務所とし、5階、6階を劇場として使用する予定です。この場合、建物を用途別に区分して耐用年数を適用することができますか。
A.
1つの建物を2以上の用途に使用するため、相当の内部造作としている場合には、それぞれの用途に応じ定められている耐用年数を適用することができることとされていますので、質問の場合、50年(事務所)と41年(劇場)になります。
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